みちくさ英語。

のんびり英語しましょ。

「どうしてTOEICが苦手なのか?」を自分なりに分析してみる話。~TESOL式・英語学習の分類法~

 

 

先日、第237回TOEIC Listening & Reading公開テストが行われましたね。

 

受験された皆様、おつかれさまでした。

 

 

筆者も地元で受験してきたのですが、Readingで時間配分を見誤り、設問をふたつ残して撃沈・・・。

 

自動音声でサクサク進んでくれるListeningとは違って、Readingは残り時間の管理や、設問を解き進める順番など、英文読解と並行して行わなければいけない形式です。

 

「素直に正面から突っ込んでいって、後半で全く時間が足りなくなった・・・」なんて経験、みなさんも一度はありますよね。

 

 

TOEICTOEIC用の戦略が必要とはよく言うものの、調べても調べても、いまいちピン!とくるものがなく。

 

  • 文章の読解/音声の再生前に、問題文を読み上げておく!
  • 難しい設問はさっさと飛ばす!
  • 集中力に自信がなければ、Part7は後ろ(複数の文章からなる設問)から先に解く!

 

などなど、もちろん多少の効果は発揮しますが、これって「英語の能力」というよりも、どちらかというと「要領の良さ」とか「判断力」を問われているものですよね。

 

ということは、このテクニックで得点を上げることが出来たとしても、英語力それ自体が向上したとは言いにくいわけです。

 

※※もちろん、TOEICで高得点を叩き出すには英語能力それ自体が不可欠ですし、「これらの戦略を備えた上での、実務的な英語力を測る試験」であるとも言えますが。

 

 

 

そこで今回は、以下の二つをテーマに、これらのテクニックとは別方向TOEICの点数を伸ばす方法を、2記事に分けて、模索していきたいと思います。

 

  1. TOEICで求められている英語力とは何か?」~英検との対比と、TESOL式・英語学習の分類法~
  2. TOEICのための勉強法は?」~教材選びと読む・聞くを三段階に分けてトレーニング~ (仮)

 

今回は、まず原因究明のために、1.の項目についての記事となります。

 

では、さっそく進めていきましょう。

 

 

TOEICで求められている英語力とは何か?」~英検との対比と、TESOL式・英語学習の分類法~

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英検○級って、TOEICに換算するとどれくらい?」という質問をしたりされたりすること、あると思います。

 

この質問にズバッと回答するの、難しいですよね。

 

筆者も「一概には言えないなぁ」と思いつつ、それがどうして難しいのか、ひとりで無駄に悩んだりしていました。(笑)

 

 

 

蒙が啓かれたのは、オーストラリアへの留学の最中。

 

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おぺらはうす。

 

ここで、TESOL(Teaching English to Speakers of Other Language)と呼ばれる英語教育の資格を取得いたしまして。

 

(※厳密には資格というより、Certificate IVといって、専門学校や職業訓練校で一定水準の知識や能力を満たしたことへの『修了証明書』みたいなものなのですが、ややこしいので資格みたいなものと思ってください。笑)

 

資格取得のために語学学校の専門コースに通うのですが、なかなかにハードで、技能別のレッスンの組み立てから、具体的なテクニックや英語教師としての適正、さらには現地で教育実習などなど・・・。

 

覚えることも課題も準備も山積みで、朝から晩まで学校に通い詰め、ひいこらしながらなんとか取得にこぎつけたのですが、その辺りの思い出は今回の趣旨に関係ないので割愛。

 

 

興味深かったのは、TESOL教授法においては「英語学習を7タイプに分類する」という考え方です。

 

4つの技能的分類

 

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先ずは、聞く」「読む」「話す」「書くの4つの技能。これは一般的な分類ですね。

 

 

大切なのは、「聞く」が最初に位置していること。

 

 

言語習得のプロセスからのお話になってしまうのですが、ヒトが母国語を習得するのには順番があります。

 

ざっくり言ってしまうと「聞く話す」という音声的な技能が最初で、「読む書く」という文字的な技能はその後。

 

また、「聞く読む」という受動的な技能の習熟がなければ、「話す書く」という生産的な技能は習熟が困難である、というものもあります。

 

 

イメージとしては、「赤ちゃんが周囲の大人の言葉を真似て、自らも発声する」だとか、「ひらがな表を見て、それを真似て あいうえお を書いてみる」みたいなものですね。

 

 

この相関関係を、簡単に図にまとめてみました。

 

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英語4技能の相関。


・・・ちょっとダサいですが、大目に見てください!

 

横に隣り合う技能同士は、「音声/文字」で繋がっています。

縦に隣り合う技能同士は、「受動的/生産的」で繋がっています。

 

左よりも右が、上よりも下が、それぞれ習熟難易度が高いのだと思ってください。

 

(予断ですが、「海外留学などの経験によって、最初に習熟を実感する技能がListeningである」という説も、この相関関係を見ると、ちょっと真実味が増しますね。)

 

 

 

さて。英検とTOEICの違いは、この図を見ると明らかです。

 

 

 

英検聞く」「読む」「話す」「書くの4技能を満遍なく計測するのに対して、

 

TOEIC Listening & Reading公開テストは、そのまま聞く」「読むに特化した試験になっているということです。

 

 

・・・あれ? じゃあ、習熟の簡単な2技能だけを測るTOEICの方が、総合的に技能を測る英検よりも、簡単ってこと?

 

もちろん、そんな簡単な話ではありません。

 

 

TOEICを難しいと感じる理由は、英語学習を構成する要素のうち、残りの3つに隠されています。

 

 

3つの言語的分類

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聞く」「読む」「話す」「書く」が、学習者個人の技能に依存する英語の構成要素であるのに対して、ここで紹介する3要素は言語それ自体に備わっている構成要素です。

 

それが、語彙(Vocabulary)」「文法(Grammar)そして機能(Function)

 

さて、「語彙」と「文法」はともかくとして、「機能(Function)」というのはあまり馴染みがないのではないでしょうか。

 

 

 

分かりやすい説明のために、ひとつの例をご紹介。

 

 A: Thank you, you saved my life!

 B: My pleasure!

 

場面としては、BさんがAさんに何かすごく親切なことをしてあげたと思ってください。

 

 

 

えー、これをわざと不自然な形で直訳すると、

 

 A: あなたに礼を言います、あなたは私の命を救いました。

 B: 私の喜び。

 

こうなります。

 

 

 

……これは、なんというか、けっして馬鹿にしているとかそういうのではなくてですね。

 

私たちは、「My pleasure」が感謝を伝える言葉として機能」すると知っているんです。

 

You saved my life!」も、実際に命を助けたワケではなく、「それくらい恩を感じているという、ちょっと大げさな比喩表現」だと理解できます。

 

 

 

なので、正しい意味が伝わるように、やや極端に意訳すると、

 

 A:ありがとう、ホントに助かったよ!

 B:どういたしまして!

 

こうなるわけです。

 

 

 

他にも、例えば……

 

See you!」と言われたら、「あなたを見ろ!」なんてトンチンカンな命令文ではなく、「またね!」という砕けたお別れの挨拶なのだと。

 

メールの冒頭が「This is a friendly reminder that...」で始まっていれば、「これは友好的な催促状です」とは訳さずに、「(支払い期限が迫っているなど、念のための)お知らせの通知です」というビジネス的なメールなのだと。

 

LINEグループで「May I jump in?」と聞かれたら、「飛び込んでいいですか?」とは訳さずに、「(それまでの話の流れや企画などに)私も入れてー!」という参加の意思表示なのだと。

 

 

 

すなわち、「ある特定の状況下において、言語が文法的な規則や、語彙そのものの意味以上の意味を持つ」、それが「機能(Function)」なのです。

 

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TOEIC Listening & Reading公開テストを受験されている方は、とっくにお気づきですよね。

 

 

TOEICでは、この機能(Function)」への理解力を問われる問題文が、非常に多いんです!

 

 

「ここでの○○さんの “~~~~” っていう言葉、どういう意味で使われてるの?」とか。

 

「この会話の流れだと、どう返事をするのが最適?」って時に、YES/NO形式の質問にそう答えないとか。

 

 

 

対する英検は、あくまで個人的にですが、この「機能(Function)」への理解度をそこまで重要視はせず、特に語彙」に力を入れているように感じますね。

 

ビジネスの場面に特化したとされているTOEICと比較して、取り扱う内容が分野別に幅広い、というのも背景としてあるでしょう。

 

英検準1級までいくと、「この単語、日常生活で使うか……?」と思ってしまうような難し~い単語と出会うこともしばしば。(笑)

 

 

そもそも英語というものは「言語」ですから、数学やら歴史みたいな「教科」とは違って、ひたすらに暗記したり問題集を解いたりだけではなく、独自の習得法を模索しなければいけないわけです。

 

 

語彙」や「文法」に関しては、どうしてもTOEIC専用の単語帳やら文法書に頼るのが最適解となってしまうワケですが。

 

聞く」技能を鍛えなければ、早口で話された時に聞き取れないし、「読む」技能を鍛えなければ、速度だって上がりません。

 

単語帳に書いてある文字をノートに写して意味を並べても、それは「語彙」のための勉強であって、「読む」技能は例文をしっかり読むなり、文章の中で触れるなりしなければいけませんし、ましてや「聞く」技能には全くの無関係です。

 

Listening Sectionで全く聞き取れなかった言葉が、原稿を見ると良く知っているはずの単語や表現だった、というのは、「文字(視覚的情報)」に偏重した学習法が蔓延(というと言葉が悪いですが・・・。)してしまっているためなんですね。

 

 

 

 

幸いにも、文章や音声を通じて単語の習得を測る参考書も、最近は多く出版されていますし、そもそも「読む」「聞く」というのは受動的な技能なので、特に意識をしなくてもある程度は高めることが出来ます。

 

義務教育のおかげか、海外の語学学校などでも「日本人は比較的、文法の習熟度が最初から高い」というものも、共通の見解としてあります。

 

 

 

……では、機能(Function)」を鍛えてくれる参考書が、はたしてどれほど出版されているでしょうか?

 

 

 

 

次の記事では、「機能(Function)」の習熟も含めた、筆者のTOEIC対策含む英語学習法について、ちょっと語りたいと思います。

 

よろしければ、お付き合いください。